所持はしているけれど、活用していない空き家がある…管理はきちんとするべきなの?と聞かれたら、答えは「もちろんするべき」です。
管理されず放置された空き家は、資産として致命傷を受けるだけでなく、近隣住人にとっても危険のかたまりでしかありません。所有者はしっかり責任をもって、管理をしなければならないのです。
今回は、空き家管理を自力で行うに当たって、管理の考え方や作業内容について詳しく見ていきましょう。
空き家管理の目的
資産価値の低下を防ぐ
なぜか、家というものは人が住んでいないほうが劣化は進みます。
誰もいないし誰の出入りもないのに、ほこりがたまりカビが生えます。何もしなければその分どんどん老朽化していくのです。人がいないということは、換気がされずに湿気がたまり、空気がよどみ、すぐに対処すればおおごとにならなかったはずの小さなトラブルも、大きくなってしまうからです。
老朽化が進むということは、イコール空き家の資産価値をどんどん下げているということです。
もし今後空き家を売却するのか活用するのか解体してしまうのか、方針が決まっていなくても、定期的な管理で資産価値を維持することが重要です。将来どうするのか、という選択肢はたくさんあるに越したことがないですからね。
掃除やメンテナンスをきちんと行うなどの管理に、たとえ多少費用がかかったとしても、資産価値を維持した方が結果的に見返りは大きくなる可能性もあるのです。
近隣とのトラブルを避ける
空き家を放置していると、近所に迷惑をかける要素がたくさん発生します。たとえば、
・放火や不法投棄のターゲットにされる
・犯罪者や不審者、動物が棲みつく
・老朽化により倒壊したり、家屋の一部が破損したりする
・雑草が伸び放題になり、衛生的にも景観的にも悪い
・庭木の枝が伸びて、隣家との境を越えて侵入してしまう
このようなことが起きる可能性があり、近所との関係悪化につながる恐れがあります。
金銭的な賠償問題に発展するのもつらいところですが、今後の近所との関係性などを考えると精神的なダメージも大きいものです。
そういったことを防ぐためにも、定期的な管理が必要になるのです。
空き家放置によるペナルティーを避ける
空き家放置に対して、実質的にペナルティーになるというものが存在します。
ひとつは、固定資産税の優遇措置が受けられなくなるという点です。平成26年に成立した「空家等対策特別措置法」によって、悪質な放置状態の空き家は「特定空き家」に認定されることになり、固定資産税の優遇措置がなくなってしまうのです。その結果、固定資産税の負担が今までの6倍に跳ね上がります。
もうひとつは、やはり空家等対策特別措置法により状況改善の指導や勧告があった場合に、それを無視し続けると、最終的に50万円以下の過料が科されたり、強制的に空き家を撤去されてしまったりということが起きます。
特定空き家の認定は、行政からの指導や勧告にきちんと従えば解除になるものです。しっかり普段から管理を行っていればそもそも認定もされません。
余計な税金や罰を負わないためにも、管理は重要なのです。
空き家を自分で管理する際にやっておくべきこと
管理計画を立てる
空き家管理の理想は「最低でも月1回の訪問手入れ」です。それをもとに、今後数か月間でも1年間でも、まずは大まかな計画を立ててみましょう。その際には、実際空き家を訪問した際にどんな作業をするか、何を確認するかということも書き出しておきましょう(後述「空き家管理~毎回すること~」参照)。
空き家管理にかかる費用を概算する
普段の生活の場が空き家のすぐそばにあれば別ですが、遠方である場合は空き家訪問ひとつとっても交通費がかかります。日帰りできない場合は宿泊費もそこに加算されますね。掃除用具の購入費用やメンテナンス費用も必要となるでしょう。
また、空き家を維持しておくための費用というのもあります。固定資産税や都市計画税、水道や電気の基本料金といったものは、住んでいなくてもかかります。
何にいくらかかるか概算しておくとともに、その試算結果によっては管理を専門の業者に外注することも選択肢に入れてもよいでしょう。
空き家管理~当日の準備~
服装
動きやすく、汚れてもいい格好が基本です。夏でもハチやダニがいることを考えて、またケガを防ぐためにも、長袖・長ズボンを用意しておくとよいでしょう。庭の草刈りなど外での作業も想定にある場合は、長靴もあると便利です。必要に応じて選びましょう。
持ち物
・ゴミ袋
・雑巾
・バケツ
・軍手(ビニール手袋)
・洗剤
・スリッパ
・懐中電灯(電気停止中の場合)
・掃除機またはほうき
・工具
・脚立や草刈り道具など必要に応じて
懐中電灯もそうですが、電気を止めている中の掃除は思っている以上に面倒です。夏なら冷却グッズ、冬なら防寒グッズが必要な場合もあるでしょう。修繕が必要な箇所などの記録のために、カメラもあると便利です。
空き家管理~毎回すること~
周辺確認・防犯確認
空き家に到着したら、まずは周辺をぐるっと確認します。鍵や窓を壊されて侵入された形跡がないかといったことも、このとき確認しましょう。犯罪者や不審者が棲みついていた事例もあるので、用心するに越したことはありません。
それから、家屋の外観を確認します。壁にひび割れがあったり、屋根に異常があったり、ということはないでしょうか?劣化が進んでいると、小さな台風や地震でも破損が大きくなったり倒壊につながったりする恐れがあるので、細かな異常にも気を配りましょう。
庭の具合も確認しておきましょう。雑草や庭木の枝が伸びていたら、刈ったり手入れしたりしておきます。
換気
空き家に着いたら、まず窓を開けましょう。たまった湿気を逃し、よどんだ空気を一掃するためです。
木造住宅の1番の敵は湿気です。カビ・腐食のもととなり、老朽化を一気に進める原因ともなるものです。空き家は住んでいる人がいないことで定期的な換気が行われないため、どんどん劣化が進んでしまうのです。
押入れやクローゼット、靴入れといった部分には特に湿気がたまりやすいため、こういったところも徹底的に換気を行いましょう。
通水
水道管は定期的に水を通さないと錆びついてしまい、最終的には破裂の原因ともなります。また下水管も通水がないとたまっている水が蒸発してしまい、悪臭や害虫が上がってくる原因ともなってしまいます。
毎回、蛇口を開け、1分くらい水を出しっぱなしにしましょう。
掃除
空き家の内外の掃除を行います。誰も住んでいないのになぜか溜まるほこりを掃き出し、必要な箇所には拭き掃除も施します。
雨漏りのチェック
雨漏りから建物が一気に劣化することもありうる話です。前述したように木造住宅の大敵は湿気であり、屋内に雨水が入り込むことによってカビが生えたり木が腐ったりするからです。
ぱっと目につくところだけではなく、押し入れの中なども水のシミがないかといったところを徹底的に確認するようにしましょう。
まとめ
・空き家管理の主な目的は、「空き家の資産価値の低下を防ぐ」「空き家の存在による近隣トラブルを避ける」「空き家を放置することによるペナルティーをまぬがれる」という3つ
・空き家を自分で管理する場合は、事前計画が大事。いつ空き家に行くか、経費はどれくらいかかるか、服装は、何を持っていくか、何をするか。すべてあらかじめしっかり計画を立てておく
・空き家に着いたらまず「換気」「通水」「掃除」
空き家を管理することにはきちんとした目的があり、やるべきことも明確です。管理会社に委託せず自分で行う場合には、しっかりポイントを押さえることが大切ですね。